【 院長 コラム 】

喫煙者は不採用になる時代がきています!

 受動喫煙対策を徹底する改正健康増進法が昨年七月に成立しました。
 これにより国や都道府県などが、受動喫煙防止の周知・啓発をはじめ、今年の7月1日から学校や病院、行政機関などの敷地内が全面禁煙になります。厚生労働省の基本的な考え方は、受動喫煙による健康被害が大きい子供、患者などに特に配慮した、「望まない受動喫煙」をなくすというものです。
 「望まない受動喫煙」をなくすだけでは手ぬるいと考えた大学が現れました。これからの内容はネット記事からの引用です。長崎大学は、禁煙対策の強化として、教職員の就業時間内の喫煙を禁止すると共に、今後の新規採用にあたり喫煙者を採用しない方針を示しました。教職員がタバコを吸って自分の健康を害するだけでなく、学生はやはり教員の背中を見ていて、教育の場としては、喫煙者は相応しくないと結論付けました。こうした基準を設置するのは、国立大学としては全国初の試みだそうです。この方針にはやはり賛否両論が沸き起こりました。「差別だ。人権侵害だ。」という批判の声が上がる一方、「タバコは嗜好ではなく依存症を引き起こす」、「医療従事者を養成する大学として当然」という賛同の声も寄せられました。
 「タバコを吸う、吸わないは個人の嗜好であり、大学が踏み込む問題ではない」という反論に対して憲法の立場からある弁護士が語っていました。「喫煙権」は人権なのか。受動喫煙の問題と同時に、タバコを吸った後も30~45分間は喫煙者の息から有害物質が吐き出されることや、服やカーテンなどに残ったタバコ残留物から有害物質を吸い込んでしまう「三次喫煙」の問題も指摘されています。それが原因で喘息発作を起こす人もいます。この点が「単なる嗜好の問題」とは言えないところの難しさです。大学には未成年の学生もいます。大学側には全ての方に健康なキャンパスライフを保障する責任があるわけです。その責任からすると、喫煙者を採用しないことで憲法違反の判決は出にくいように思うと指摘しています。さらに、個人的には、喫煙権の問題は、人権そのものというよりも、個人的な嗜好であり、個人生活上の利益として存在している。喫煙者を採用しないという問題も、大学の裁量権の問題であり、裁量権の逸脱や濫用がなければ違法にならないのではとまとめています。
 5月31日は「世界禁煙デー」でした。WHOが世界の人々の健康のために禁煙を推進するために設けた日だそうです。何はともあれ喫煙者を取り巻く環境は厳しくなっているのは間違いない。
 喫煙者のなかでも特に、小さなお子さんがいる親御さんはこの際禁煙してみてはいかがですか。

(ナウ・レッツ・ビギン№346より)



予防接種(ワクチン)について

 皆さん、「VPD」という言葉をご存知ですか。「VPD」とは「ワクチンで防げる病気 Vaccine(ワクチン)Preventable(防げる)Diseases(病気)」のことです。VPDは誰にでもかかる可能性があり、いったんかかってしまうと、病気を確実に治療する方法はありません。
 乳幼児期は免疫(病気に対する抵抗力)が未発達なため、さまざまな感染症にかかります。そして感染していくことで免疫をつけながら成長していきます。総合的な免疫力を比較すると、生まれてすぐが一番弱く、6か月過ぎになると少しずつ強くなってきますが、2歳くらいまでは弱いままです。そのため、たとえば、肺炎球菌やヒブ菌などの菌が簡単に子供の免疫システムを通り抜けて、敗血症や細菌性髄膜炎など重大な病気を起こしやすいのです。麻疹(はしか)や百日咳なども、年齢が低いほど重症になりやすい病気です。免疫力が弱い子供たちがVPDにかかって重症化するのを防ぐ助けになるのが、ワクチンなのです。 一人でも多くの子供たちが予防接種を受けられるようにすることがとても重要です。

(ナウ・レッツ・ビギン№225より)


 1歳半健診に出向いたときのことです。20数人の1歳6か月前後の子供たちとその保護者が多く来場していました。ひと通りの内科診察をして、発達の遅れがないか、心配事がないかなどを聞くことにしていますが、私は必ず母子手帳のワクチン欄を見て接種が順調に進んでいるかもチェックするようにしています。
 ある患者さんの母子手帳のワクチン欄を見ると全く記載がないことに気付いたので、てっきり母子手帳を紛失して新しい手帳を再交付してもらったために過去のワクチン接種歴が失われているものと思ってお母さんに確認しました。するとこれまで全くワクチンは接種しておらず、今後も接種する予定もないとのことでした。お母さんに接種しない理由を尋ねたところ、副作用が心配とのことでした。もともとかかりつけの先生はいらっしゃるはずで、その先生も未接種のことは把握されているはずですので、私からあえてしつこくは言いませんでした。「はしかに罹って死ぬこともあるし、命が助かっても後遺症で苦しむことはあります」旨の話だけさらっとしておきました。たぶん両親は確固たる信念のもとに、わが子にワクチンを接種させないことを決めておられるのでしょうから、私が時間をかけて説得しても無駄だろうと思いました。
 副作用で困る確率と実際にその感染症に罹患して苦しんだり、命を落としたり、後遺症を残したりする確率を比較すると、後者の確率がはるかに高いはずです。副作用もゼロではありませんので、ゼロでないと気が済まない保護者にはワクチンは受け入れられないかもしれません。ただ冷静に上記の確率論から考えると、やはりわが子にはワクチンを接種するべきで、防げるものは防ぐべきだと思います。ワクチンなしでこれから生きていこうとする子供さんが、恐ろしい感染症に罹らず、健やかに成長されることを切に望んだことでした。

(ナウ・レッツ・ビギン№275より)

ワクチンって、病気が流行らなくなればもう要らないのでは?

 過去のワクチン中止により百日咳で113人が死亡

 今、日本では、予防接種法という法律に基づき、子どもに麻疹(はしか)やジフテリア、ポリオなどのワクチンを接種することが勧奨されています。「まわりにそんな病気の患者さんはいないのに、なぜワクチンを使わなくてはならないの?」とよく聞かれます。これらのワクチンで防げる感染症(VPD)は、国内はもとより、海外でも根絶されたわけではありません。今、VPDの多くは、ワクチンの接種率が高く保たれているために患者が出ていないだけで、予防接種をする人が少なくなれば必ず再流行します。
 分かりやすい例を挙げると、日本では昔、百日咳により赤ちゃんや子どもを中心に毎年10万人以上の患者が発生し、1万人以上が亡くなっていました。1960年代後半、百日咳に対するワクチンが広く接種されるようになってからは患者数が激減し、ほとんど見られなくなりました。しかし1970年初め、百日咳ワクチンを接種した後、2人の赤ちゃんが亡くなりました。当時は「百日咳はもはや過去の病気なのに、国がワクチンを勧めたせいで赤ちゃんが死んだ」と大きく報道され、国民は不安に陥りました。国はこれを受け、百日咳ワクチンの子どもへの接種を数年間中止します。すると、百日咳の患者数は年間約1万人を超え、死亡者は年間20~30人に増えました。
 百日咳ワクチン接種の後に亡くなった2人の赤ちゃんは本当に気の毒です。でも、専門家の間では、ワクチンが死亡の原因だったのかは非常に疑問と考えられています。一方で、ワクチンが再開されるまでの間に113人が百日咳のために亡くなりました。国や自治体が予防接種の制度を中止すべきなのか、あるいは保護者が自分の子どもにワクチンを接種するかを判断するには、ワクチン接種の中止により百日咳による死者が113人に増えた事実と、2人の死亡との両方を考えないとなりません。

 年間260万人がワクチンで防げる感染症で死亡

 また、最近の日本でも、予防接種率の上昇によって国内での流行がなくなった麻疹(はしか)が2014年1月、流行地のフィリピンから持ち込まれ、多くの地域で予防接種前の1歳未満の赤ちゃんや、2回のワクチン接種を済ませていなかった人の間で流行しました。
 毎年、世界で700万人近くの5歳未満の子どもが感染症で死亡しており、そのうち260万人は、ワクチンが届かないためにVPDで死亡しています。一方、ワクチンの接種率が高い国では、過去に年間数千~数万人の患者や死者を出していたVPDの患者が激減していることを忘れないでほしいと思います。

(ナウ・レッツ・ビギン№320より)